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福井地方裁判所 昭和56年(わ)29号 判決 1981年8月03日

本籍

福井市山室町第四四号一一番地甲

住居

福井市山室町第四四号一一番地

織物製造業

中谷保次

昭和三年二月二五日生

本店の所在地

福井市山室町第四四号一一番地

中谷織物株式会社

右代表者代表取締役

中谷保次

右中谷保次に対する所得税法違反、法人税法違反、中谷織物株式会社に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官石井政治出席のうえ審理して次のとおり判決する。

主文

被告人中谷保次を懲役一年二月及び罰金一、六〇〇万円に、被告中谷織物株式会社を罰金七〇〇万円に処する。

被告人中谷保次において右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間中同被告人を労役場に留置する。

被告人中谷保次に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人中谷保次は、昭和二三年六月ころから同五四年六月三〇日までの間、福井市山室町第四四号一一番地において、織物製造業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て

一  同五二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における総所得金額は四、八一八万一、五八九円、これに対する所得税額は二、三一四万六、二〇〇円であるのに、売上の一部を除外し架空の仕入を計上するなどの不正の方法によりその所得の一部を秘匿したうえ、同五三年三月一五日、福井市春山一丁目六番一号所在の福井税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額は八四五万四、三九九円、これに対する所得税額は一五四万五、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同事業年度の所得税二、一六〇万〇、五〇〇円を免れ

二  同五三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における総所得金額は八、〇五八万二、六七二円、これに対する所得税額は四、五三六万〇、三〇〇円であるのに、売上の一部を除外し架空の仕入を計上するなどの不正の方法によりその所得の一部を秘匿したうえ、同五四年三月一三日、前記福井税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額は二、五六五万八、六五四円、これに対する所得税額は九七三万七、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同事業年度の所得税三、五六二万二、六〇〇円を免れ

三  同五四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における総所得金額は四、三六一万六、九五七円、これに対する所得税額は一、九三七万〇、三〇〇円であるのに、売上の一部を除外し架空の仕入を計上するなどの不正の方法によりその所得の一部を秘匿したうえ、同五五年三月一四日、前記福井税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額は三、四五六万一、四四七円、これに対する所得税額は一、三八一万六一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同事業年度の所得税五五五万四、二〇〇円を免れ

第二  被告中谷織物株式会社は、福井市山室町第四四号一一番地に本店を置き、織物製造業を営んでいるもの、被告人中谷保次は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、被告人中谷保次は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、同五四年七月一日から同五五年六月三〇日までの事業年度における同会社の所得金額は一億四、〇五四万〇、七六六円、これに対する法人税額は五、五二〇万六、二〇〇円であるのに、売上の一部を除外し架空の仕入を計上するなどの不正の方法によりその所得の一部を秘匿したうえ、同五五年九月一日、前記福井税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額は五、九七六万六、七九〇円、これに対する法人税額は二、二八九万六、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同事業年度の法人税三、二三〇万九、六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示各事実について、被告人及び被告会社代表者中谷保次の当公判廷における供述のほか、記録中の証拠等関係カード(検察官請求分)に記載されている次の番号の各証拠

判示全事実につき

6、8、11ないし14、29ないし31、35、51、52、54ないし56、58、59、63ないし67

判示第一の各事実につき

15ないし20、22、27、37、38、62、68

判示第一の一の事実につき

2、40、61

判示第一の二の事実につき

3、23

判示第一の三の事実につき

4、21、24、25、36、39

判示第一の一及び二の事実につき

10、26、41

判示第一の一及び三の事実につき

9、60、69

判示第一の二及び三の事実につき

33

判示第二の事実につき

5、28、43ないし46、57、72

判示第一の二、三及び第二の事実につき

7、32、34、42、47ないし50

(法令の適用)

被告人中谷保次の判示第一の各所為はいずれも脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律(昭和五十六年法律第五十四号)による改正前の所得税法二三八条一項に、判示第二の所為は右改正前の法人税法一五九条一項、二項にそれぞれ該当するところ、いずれの罪についても所定刑中懲役刑に罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人中谷保次を懲役一年二月及び罰金一、六〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金四万円を一日に換算した期間被告人中谷保次を労役場に留置することとし、懲役刑については同法二五条一項により三年間その執行を猶予することとし、被告中谷織物株式会社の判示第二の所為は、前記改正前の法人税一六四条一項、一五九条一項、二項に該当するので、その所定金額の範囲内で被告中谷織物株式会社を罰金七〇〇万円に処することとする。

(裁判官 木村幸男)

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